悪い奴ほどよく眠る

監督:黒澤明

黒澤明にそれほど思い入れはないが、これは予想外の傑作。黒澤映画で一番好きかも。冒頭の結婚式のシーンは素晴らしく、バラの刺さったビル型ケーキがこれからの不穏な展開を予感させ印象深い。これは当時の汚職事件など世相を反映した社会派サスペンスではあるが、単純に殺された親への復讐譚として非常に楽しめた。脚本が驚くほどよく出来ていて、体に障害がある香川京子の役割など駒としての配置も見事。他の役者も皆重厚な芝居が素晴らしい。黒澤の演出もパワフル。三船の正体がバレ、帰宅時の玄関で階段上から全員に見下ろされ逃げる構図がいい。ただひとつ惜しいのは最後の三船の不在がちと残念。50年以上前の映画なのに全く色褪せていない。黒澤明の凄さを今更ながら確認できた。