リリイ・シュシュのすべて

監督:岩井俊二

チマチマした青春映画だと思い敬遠していたが、強烈なパンチを喰らわされた。10代の焦燥感や危うさ、怖いもの知らずの悪意と心の叫びをフィルムに焼きつけている。高校デビューではないが、夏休み明けに急に豹変するやつとか、そういう奴実際いたなあ。沖縄旅行が余計な気もしたが、あの後の豹変なので、その落差を表現するために必要か。ネットの書き込みによる進行も、新しい訳ではないが、10代を表現する方法としては効果的であった。時折はさむ、甘酸っぱい映像だったり、”エーテル”なんていう単語だったりが岩井俊二らしいなあと思ったが、それ以上に、この映画には映像に引き付けるパワーがある。脚本も相当練られているし、まだあどけない市原隼人蒼井優が懸命に生きている。また丸刈り伊藤歩も凄かったし、忍成修吾のいじめっぷりは本当にリアルで気味が悪かった。岩井自身”これを遺作にしたい”と語るだけあり、おそらくあの時代でしか撮れないであろう痛い青春映画だ。