イングロリアス・バスターズ

監督:クエンティン・タランティーノ

ナチスの戦争ものというよりは、タランティーノ映画というジャンルだな。戦争映画にマカロニウェスタンの音楽、長〜い会話、頭皮剥ぎ取る痛い描写、拳銃向けあって撃ち合うなどなどタランティーノの得意技が炸裂していて楽しい。全編英語にせず、いろいろな国の言葉が飛び交うというのはアメリカ人にはあまり好まれないと思うが、それでもそうしたところに、今回は言語へのこだわりがあったのだろう。そしてキャスティングのこだわりは言うまでもない。ナチス将校ランダ大佐役のクリストフ・ヴァルツはこの映画の主役といっていいだろう。狡猾さと残忍さ、そして自在に言語を操り特異なキャラクターをものにしている。冒頭のフランス人農場主を訪ねてくるところでの緊張感あるやり取り。それとヴァルツが再びメラニー・ロランと再会したところ。全てを見透かしているヴァルツのいやらしさ、そしてパイにクリームを塗って食べるシーンは印象深い。またヴァルツの怪演に隠れがちだが、個人的にはドイツの役者たち(ダイアン・クルーガーダニエル・ブリュールティル・シュヴァイガー)も皆よかった。ただ手放しに大満足かというとそうでもない。終盤の映画館の爆発に至るまでの過程が思ったほど盛り上がらなかったことや、近年の作品の中では一番いい出来だが、それでも「パルプフィクション」と比較してしまうと、あっちほどミラクルな出来ではない。