ずっとあなたを愛してる

監督:フィリップ・クローデル

気品ある顔立ちより、上流階級の役が多い印象のクリスティン・スコット・トーマスの疲れた別人のような表情にまず驚く。そしてフランス語を流暢に喋る姿に感心。大きなことは何一つ起こらない日常のエピソードの積み重ねだが、贖いと再生の物語を実に丁寧に撮っているので、物語に深みがある。そしていろんなことを考えさせられる映画であった。人生の理不尽さや過酷さ、そして刑務所の人間と自分たちとは紙一重という台詞に妙に納得してしまった。罪を背負って生きいくことが痛いほど伝わってきて、パーティで過去に何をしたか問い詰められ、真実を言うが、冗談と思われ笑われるシーンが、忘れ難い印象的シーン。最初はタイトルに違和感を感じたが、最後にタイトルに込められた意味が分かり、彼女がどんな思いで生きてきたかがようやく理解できた。なにはともあれ、この映画はK・S・トーマスの渾身の名演が見られ、彼女の今後の可能性の広がりを感じずにはいられない。