バーニング 劇場版

監督:イ・チャンドン

話的には大したもんではないし、これだけ時間をかける必要もないのだが、それでも映像的に魅せられるものがあった。特に素晴らしいのは夕暮れの映像。夕暮れ時にビニールハウスを探しまわる時の、たくさんの鳥が飛んでいるシーン。このシーンだけで評価が上がったといってもいいぐらい美しい。原作は村上春樹の「納屋を焼く」で、この焼くというのは殺人のことのようだ。そう考えると、近所でビニールハウスは焼かれてないのに、焼いたと主張する男の不気味さがじわじわと浮かび上がる。まさに殺人鬼のギャッッビー。謎めいて全く怒りを表に出さず、飄々としてるので、恐さが際立った。後半女を全く登場させないのもいい。とにかく全編詩的で、後を引く映画である。