丹下左膳餘話 百萬兩の壺

監督:山中貞雄

これは大傑作!ちゃんばらヒーローの丹下左膳なんて全く知らないし、山中貞雄のことも知らないし、そもそも古い時代劇を楽しめるか心配だったが、杞憂に終わった。1935年の時代劇なのに全く古さを感じないストーリーの面白さ。そして物語の運び方、キャラクターの配置などもう見事といいたくなるぐらい計算して作られている。源三郎の妻の天然キャラぶりが可愛らしいし、子役の安吉もかわいい。左膳、女将の夫婦漫才みたいなノリや源三郎のすっとボケぶりもよし。しかしこの時代にこんなシャレたコメディが日本に存在していたことに何より驚いた。この監督がよくやる、過程を見せずに次のシーンで結果を見せるという省略の演出が実に巧みで、こんなテクニックをこの時代でこんなに鮮やかに使いこなすなんて、ちょっと信じられないぐらい衝撃的。昔の時代劇という理由で見逃したらホント勿体ない。山中貞雄は生涯3本しか映画を残しておらず、まだ1本しか観ていないが、この監督が天才と言われている理由がよーく分かった。他のも観たいぞ!