ノーカントリー

監督:ジョエル・コーエンイーサン・コーエン

はじめにコーエン兄弟は余り好きではない。しかし今回はかなり楽しめた。デビュー作の「ブラッド・シンプル」に通ずるものがあるが、テクニック面で格段の進化を遂げている。追う者と追われる者というシンプルな構成ではあるが、密度が濃い。撮影や編集が素晴らしく、中盤のJ・バルデムとJ・ブローリンの対決は最高の見せ場で何か出来のいい西部劇を見ているような感覚だ。またドアの錠という小道具の使い方もいい。俳優ではハビエル・バルデムがでかい&濃い顔で場をさらっている。特にバルデムの会話のシーンでは不気味な圧迫感があり、こいつは何を仕出かすか分からない怖さがある。最近活躍が目覚しいジョシュ・ブローリンカート・ラッセルのような風貌でマッチョな感じがいい。終盤の暴力の考察がやや説教くさい気がしないでもないが、コーエン兄弟の最高傑作と言ってもいい出来で、この兄弟の映像テクニックを堪能した。